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耐候性について

熱可塑性プラスチックを含む有機ポリマーは、屋外の環境に長期間さらされることで徐々に劣化を生じます。これは主に、太陽光に含まれる紫外線がそのエネルギーでポリマー結合を切断する直接的な効果と、それによって生じた反応性の高いラジカル(主に酸素原子からなる)が連鎖的にポリマーを破壊していく副次的な効果(自動酸化機構)によるものです。

また、大気中に含まれる水分は、ラジカルの生成源となって上述の自動酸化劣化を早めるほか、水分そのものによる加水分解の影響も加わり、ポリマーの劣化を促進します。

通常のABSは、主要成分の一つであるブタジエンゴムが分子鎖中に二重結合を多く含んでおり、この部分が特に耐侯劣化の影響を強く受けます。このため、無加工の状態のABS樹脂は、屋外のような強い紫外線に長時間晒される場所での使用には適しません。
紫外線吸収剤等を配合することで、劣化を遅らせることは可能ですが、上述の通り、耐候性はベースとなる樹脂そのものの性質により、その大部分が決まります。

こうした厳しい屋外環境での使用に最適な製品として、Techno AES®、Techno ASAシリーズをご用意しております。
これらの製品では、ABS樹脂のポリマーのうち、特に劣化の生じやすい、二重結合を含む部分の構造を置き換え、さらに紫外線の影響を抑える添加剤を配合することで、ABS樹脂本来の優れた物性バランスを維持しつつ、耐候性を大幅に向上させております。

耐候性に優れ、物性バランスも良好なTechno AES®、Techno ASAの採用を是非ご検討下さい。
他の汎用樹脂との比較表は下記のとおりです。

  AES® ASA ABS GPPS HIPS PP PMMA PC
耐候性 ×
耐衝撃性 × ×
寸法安定性 ×
耐薬品性 ○~◎ × ×
耐熱性 ×
外観
比重
材料単価 △~○ △~○

1)ABS工業会編「ABS概論」の中のABSと各種樹脂との比較表に弊社でのAES®、ASA樹脂の評価を追加致しました。
2)各材料には幅広いグレード群がありますので、正しくは各樹脂メーカー等のカタログをご参照ください。

樹脂の耐候性と、着色剤の耐候性について

プラスチック製品の耐候性を考えるとき、正確には樹脂そのものの耐候性と、樹脂に含まれる着色剤の耐候性を分けて考える必要があります。
上述の有機ポリマーの劣化メカニズムは、樹脂以外の有機染料等にも同様に作用するため、着色剤そのものも耐侯劣化を引き起こします。

プラスチック製品が紫外線の影響で劣化を起こす場合、その影響はまず外観に表れます。日常生活でしばしば目にするように、屋外で長期間使われているプラスチックは、徐々に本来の色が褪色し、さらに劣化が進むと表面に白い粉を吹いたような状態になることもあります。

劣化の初期段階においては、プラスチックは色褪せこそ生じていても、機械強度等の特性においてはほとんど当初の状態と変化はありません。
これは、紫外線がプラスチック表面のごく浅い領域(表面から数十μm)で吸収され、部品内部においてはほとんど劣化を引き起こさないためです。
しかしながら、製品自体の性能を考えるとき、色褪せそのものが問題とされる場合もあることと思います。
(さらに紫外線の影響を受けると、劣化は徐々に深くへと進行し、最終的には表面の亀裂等が起点となって、部品そのものの強度も低下していきます。)

製品の耐候性が、主に色褪せを念頭においている場合、樹脂自体が耐候性の優れたものを選ぶと同時に、着色剤についても耐候性の高いものを使用することが重要です。
弊社では、こうした観点を十分に考慮して製品のご提案をしておりますが、製品設計においてひとくちに「耐候性」といった場合に、色褪せと機械強度のどちらがより大きな問題となるのか、どのような使用環境が想定されるのかを具体的にお伝えいただくことで、より的確なご提案が可能になります。ぜひ、ご検討下さい。

「耐候性」と、「耐光性」の違い

プラスチック樹脂のカタログなどで用いられる、「耐候性」と「耐光性」の違いについてご説明します。
文脈によって同じ意味で用いられることもあるこれらの言葉ですが、厳密には、「耐候性」は雨を含む屋外環境での劣化、「耐光性」は紫外線を主とした光の影響による劣化に対する耐性を意味します。上述のように、水分の存在によって劣化は促進されますので、一般的には「耐候性」のほうがより過酷な環境を想定しております。

一方、屋内のガラス越しであっても、紫外線の一部は通常のガラスを透過するため(※)、長時間の暴露では樹脂や着色剤の劣化は生じます。
従って、OA機器や車両内装のような用途であっても、「耐光性」が求められる場合は多くございます。

樹脂の耐候性/耐光性の評価には、一般にキセノンランプ、カーボンアーク灯等、太陽光に似たスペクトルの光源を用いた促進試験が利用されますが、試験規格においても上記の違いを反映した設定がなされるのがふつうです。
例えば、代表的な促進試験装置であるサンシャインウェザーメーターでは、降雨を模擬した水の間欠噴射を設定することができ、屋外使用を想定したケースでは雨あり条件で試験を行います。
 
※ UVカット加工が施されたガラスでは、紫外線のほぼ全域を遮蔽できます。